契約当事者についての注意点


契約当事者

契約当事者とは、形式的にいえば契約書に署名押印する者ということになり、立会人などは当事者ではありません。実質的には、契約により権利を取得したり、義務を負ったりする者のことをいいます。契約書を作成する上で、この当事者は非常に重要です。当事者以外の者に署名・押印してもらっても何の意味もありません。よく知っている相手なら間違いはないと思いますが、契約当事者同士が初対面ということもあります。また、当事者の一方又は双方が、「会社」「法人」などの場合、その法人等の代表者なのか、支配人なのか、それとも会社代表者であるが、代表者個人として契約する意思なのかなど、その権限について注意すべき点がいくつかあります。
当事者の本人確認を怠ると、思っていた相手以外と契約が成立していたり、責任追求すべき相手に責任を問えないことになったり問題が生ずることもあります。当事者の本人確認は必ず行い、正確な署名・押印を実現する必要があります。

当事者の表記

契約書には、当事者を確定するために、当事者が「署名・押印」します。当事者は、自然人、会社、法人、組合などがありますが、それぞれの記載方法の例を挙げます。

自然人(一般人個人)の場合、

(甲)住所 沖縄県市町村番地
   氏名   ○○○○ ㊞

住所・氏名の正確な記載と、他人の成りすましに注意が必要です。「記名・押印」でも契約は有効となりますが、「署名・押印」の方が確実です。住所・氏名両方を自署するのも良いですが、最低限「氏名」を自署すれば十分だと思います。住所・氏名は、「住民票の写し」や、「印鑑証明書」で確認すると良いでしょう。(発行から時間が経過したものは注意が必要です。)また顔写真つきの身分証明となるもの(運転免許証や住民基本台帳カードなど)のコピーをとっておきましょう。

会社・法人・組合など

会社等が当事者となる場合、「売主(甲)株式会社□□□□」とだけ書かれているのでは無効ではありませんが、不十分です。契約の意思表示は、会社等の代表者や、権限を有する代理人等がしてその契約の効果が会社等に帰属するのですから、その意思表示する代表者等を確定していないと、「そんな契約はしらない」と言われると困ったことになってしまいます。そのような事態に陥らないために、正式な商号所在地代表者の氏名等を記載する必要があります。また、自然人の住所・氏名は、住民票の写しや、印鑑証明書で確認しますが、会社等の本店・商号等の場合は、法務局の「登記事項証明書」で確認します。登記事項証明書には、誰が会社の代表者か、支配人は誰か、も記載されています。会社の看板や名刺などはあてになりません。会社の登記上の商号と営業に使用している名称が違うということもあります。登記事項証明書での確認は怠らないようにしましょう。
会社等が当事者となる場合の表記は以下のとおりです。

【株式会社・代表取締役】

売主(甲)沖縄県市町村番地
 株式会社□□□□
 沖縄県市区町村番地
 代表取締役 ○○○○ ㊞

【株式会社・営業部長(支配人)】

売主(甲)沖縄県市町村番地
 株式会社□□□□
 沖縄県市区町村番地
 営業部長(支配人)○○○○㊞

【合同会社・業務執行社員】

売主(甲)沖縄県市町村番地
 合同会社□□□□
 沖縄県市区町村番地
 業務執行社員 ○○○○ ㊞

【合同会社・代表社員】

売主(甲)沖縄県市町村番地
 合同会社□□□□
 沖縄県市区町村番地
 代表社員 ○○○○ ㊞

【特例有限会社・代表取締役】

売主(甲)沖縄県市町村番地
 有限会社□□□□
 沖縄県市区町村番地
 代表取締役 ○○○○ ㊞

【一般社団法人・代表理事】

売主(甲)沖縄県市町村番地
 一般社団法人□□□□
 沖縄県市区町村番地
 代表理事 ○○○○ ㊞


代理人との契約

契約当事者は代理人によって契約を締結することもできます。しかし、代理人による契約はトラブルになりやすいものです。十分注意しておく必要があります。
代理人による契約の場合、最初に確認すべきことは、「委任状」です。代理人と証する相手方が、当事者から権限の委任を受けていることを証明できない場合は、たとえ契約書調印の立会日でも契約書に署名押印すべきではありません。
代理人が委任状を提示すれば安心していいというものではなく、委任の内容が明確になった委任状を確認してから契約を締結するほうが安心です。また、白紙委任状は言うまでもありませんが、委任状に捨印を押すのも控えましょう。相手方代理人から、捨印が押印され、何箇所も訂正されて委任内容が元々の内容と大きく変わっているような委任状が提示された場合は危険ですので、委任状を再度本人からもらってくるように要請し、その日は契約を延期したほうがいいかもしれません。

委 任 状

   沖縄県市町村番地
   代理人 ○ ○ ○ ○

私は、上記の者を代理人と定め、下記の事項を委任する。

1.後記不動産につき買主△△△△と売買契約締結に関する一切の件。
なお契約内容は次のとおりとする。

①代金額は1㎡あたり金10万円以上
②代金支払期は平成○年○月○日まで
本委任状の有効期限は平成○年○月○日までとする。

平成○年○月○日

沖縄県市区町村番地

委任者 ◎ ◎ ◎ ◎ ㊞

不動産の表示
 所 在 沖縄県市町村
 地 番 ○番
 地 目 宅地
 地 積 123㎡45

代理人の表記方法

代理人の契約書への署名の仕方は以下のとおりです。

【当事者が自然人の場合の代理人】

沖縄県市町村番地
売主(甲)○○○○ 
沖縄県市町村番地
売主(甲)代理人 ◎◎◎◎ 印

【当事者が会社等の場合の代理人】

沖縄県市町村番地
売主(甲)株式会社□□□□
上記代表取締役 ○○○○
沖縄県市町村番地
売主(甲)代理人 ◎◎◎◎ 印